Radioheadの新譜 『In Rainbow』に見るビジネスモデル
2007-10-17

UKロックファンならご存知かもしれませんが、UKロックの大御所Radioheadの新譜がネット上のみで公開されている。最近はネットリリースは我らがoasisも行うなど盛んだし、それ自体は驚くことではない。
しかしリリース方法がRadioheadらしくすごく斬新です。バンドは前作で大手レーベル(EMI)との契約を満了し、今回はレーベルを通さず、オフィシャル・サイト(Radiohead.comから自動的にInrainbows.comへ移動する)のみで販売している。
更に更に。ここが最大の特徴なんですが、価格がいわゆる『言い値』になってます。
ごちゃごちゃせつめいするより実際にInrainbows.comにいってもらうと分かると思うけど、購入画面の価格の箇所が空白になっており、好きな数字を入れられるようになっている。
空欄の横にある“?マーク”をクリックすると“It's Up To You”とお洒落なメッセージ。試しに0.0。つまり0円を入力したが全く問題なくDLできてしまった。
後のリサーチによると『In Rainbows』が初日だけで120万枚のセールスを上げたとされる。
更に3,000人以上が参加したGigwise.comの世論調査によると、同アルバムの平均購入価格は4ポンド(約1000円?)だったらしい。
この2つのデータを元に推測すると、『In Rainbows』は初日だけでおよそ12億円のセールスを上げたことになる。初日だけで。時給5000万。
CDセールス≠バンドの収入。
これが従来の音楽業界の常識。なぜならレーベル契約によりバンドの取り分は5〜20%ほどに制限されるのが普通だそうだからです。
まあCDを売ると簡単に言っても、プロモーション、流通、小売店等、様々な中間コストが発生しておりこれは当然のことです。
もともと音楽やプログラム等の知的財産は一度開発してしまえば後は低コストで大量生産が可能である。その分ヒットすれば利幅が大きい業種だといえる。(ヒットするのが難しいのだが)
ただ今回の試みではバンドが直接ファンにダウンロードさせる形式をとる事で一切の中間コストを排除している。低コストどころか無コスト。
つまり
CDセールス=バンドの収入。
という従来では不可能だったビジネスモデルを確立した事になる。
この新しい手法により、1日で彼らは12億を手にしたと推測される。
従来の場合、契約が売上の20%を取り分と設定していたとすると、12億稼ぐのに何枚のCDを売る必要があるか?
60億の売上を上げる必要があるため1枚2000円と仮定した場合、300万枚のセールスが必要になる。
300万枚。この数字はどう考えても1日で売り上げられる数字ではない。
つまりこの新しい手法は従来に比べ、アーティスト側に金銭的に多くのメリットを生み出していると言える。
個人的には、CDを発売日に並ぶあの感覚が失われたとか、パソコンないと曲聞けないじゃんとか。ツッコミどころはあるのだが。
とにかくアーティスト側から見ればノーリスクハイリターンの夢のようなビジネスモデルである。
今回、Radioheadがこの手法で成功した事を受け、多くのアーティストがこの流れを追随してもおかしくないだろう。
この流れは音楽にかぎらず、書籍等のその他のメディアに波及することも考えられる。
こうなると、知的財産が無料で手にできるという事実上のパブリックドメインにおかれるのだから、大きな目で見れば世界全体の文化に重要な変化をもたらす可能性もあると個人的には思う。
ちょっと大げさに書いたけれどもとにかく、Radioheadの試みは21世紀型の知的財産ビジネスの新たなモデルとして大きな意味を持つことは間違いないだろう。

